納得できる店に任せたい」オーナー様の決断

今回ご入庫いただいた車両は、BMWアルピナ B3 GT リムジンです。
アルピナというメーカーが持つ独自の哲学と、GTの称号が示す希少性。オーナー様にとって、非常に思い入れのある一台であることは間違いありません。

納車に向け、オーナー様はカーコーティングの施工店選びを慎重に進められていました。
ご自宅や職場のある新宿エリアをはじめ、都内全域、さらには関東近郊まで視野を広げ、WEBサイトや施工事例を情報源に比較検討を行っていたそうです。
 「近場ですませる」のではなく、「確かな技術と環境がある店に頼みたい」という明確な基準をお持ちでした。

広範囲にわたるリサーチの結果、群馬県にある当店を見つけていただきました。
 しかし、WEB上の情報だけで即決されたわけではありません。
オーナー様は正式なご依頼の前に、一度群馬の店舗まで足を運ばれています。
 実際にどのような環境で車を磨いているのか、照明設備は整っているか、そして担当者はどのような考えで施工しているのか。
対面で詳細な打ち合わせを行い、デモカーや施工中の車両をご覧いただいた上で、「ここなら任せられる」とご判断いただきました。

新宿から群馬まで。決して近い距離ではありませんが、その労力をかけてまで当店を選んでいただいた事実。
その信頼に応えるべく、新車を「作品」として仕上げるための作業を開始しました。

お台場での車両引き取り

今回はお客様のご指定により、お台場まで積載車で引き取りに伺いました。
指定場所に到着し、実車と対面します。
アルピナブルーのボディに、GT専用のゴールド・デコライン、そしてゴールドのマルチスポークホイール。
非常に完成されたデザインです。

屋外の自然光の下では、新車らしく非常に美しく見えました。
しかし、私たち施工者の視点は少し異なります。
屋外では見えにくい微細な塗装の欠点や、輸送中に付着した汚れの可能性を考慮しながら、慎重に積載車へ積み込みました。
美しい車ですが、そのまま乗るにはまだ早い。
プロの設備環境で細部を確認し、適切な処置を施す必要があります。

施工ブースでの現状確認

群馬のスタジオに車両を搬入し、外光を遮断した環境で初期チェックを行います。
コーティングの仕上がりは下地処理で決まるため、この現状把握は最も重要な工程の一つです。
特殊な高輝度LEDライトを多角的に当て、塗装の状態を詳細に確認しました。

まずボディの状態ですが、懸念していた通り「オーロラマーク」が確認できました。
 オーロラマークとは、ポリッシャー(研磨機)を使用した際に発生する、ホログラムのような微細な磨き傷のことです。
輸入車の場合、本国からの船便輸送、港での保管、そしてディーラーへの陸送と、納車までに長いプロセスを経ます。
その過程で付いた小傷や保護シートの糊跡を除去するため、PDIセンターやディーラーにて納車前の仕上げ磨きが行われることが一般的です。
 しかし、その際のバフの選定や磨きの技術が適切でないと、傷は消えても、新たにこのような磨き傷を残してしまうことがあります。
このオーロラマークが、アルピナブルー本来の透明感を損なわせ、全体を白っぽく曇らせていました。

次にインテリアの確認です。
今回の車両は、非常にデリケートな白のラヴァリナレザーが採用されています。
 ドアを開けて確認すると、運転席のサイドサポート、座面、ステアリングなどに、うっすらとした黒ずみが見受けられました。
新車であっても、製造ラインや移動の際に作業員が触れることで、皮脂汚れや衣服の擦れ汚れが付着することは避けられません。
特に白革は汚れが目立ちやすく、このまま放置すれば汚れが固着してしまう状態でした。

これらの現状をお客様にも報告し、事前に打ち合わせたプラン通り、内外装の徹底的なリセットと保護を進めていきます。

「BLACKコース」によるトータルプロテクション

今回ご用命いただいたのは、当店のフラッグシップメニューである「BLACKコース」です
このコースの最大の特徴は、ボディコーティングだけでなく、美観維持に不可欠な
「ホイールコーティング」
「キャリパーコーティング」
「ウインドウ全面撥水」
「未塗装樹脂コーティング」
が全て標準で含まれている点です。

ボディだけを綺麗にしても、足元や窓ガラスが汚れていれば車全体の印象は締まりません。
BLACKコースは、愛車を丸ごと一台、隙なく守りたいというオーナー様に最適なプランです。

徹底的な下地処理と肌調整

まずはボディの施工から着手します。
洗浄とマスキング(養生)を完了させた後、この工程の要である研磨作業に入ります。
 今回は単に傷やオーロラマークを消すだけでなく、塗装表面のうねりや凹凸を平滑に整える「肌調整」を行いました。

「肌」とは、塗装表面のゆず肌(オレンジピール)と呼ばれる微細な凹凸のことです。
新車であっても、塗装特有のボコボコとした質感は必ず存在します。
この凹凸が光の乱反射を招き、景色の映り込みを歪ませる原因となります。
そこで、塗装のクリア層をミクロン単位で精密に研磨し、この表面をより平滑な鏡面状態へと導く作業が必要になります。
これが肌調整です。

しかし、アルピナの塗装は非常に繊細です。むやみに削って平らにすれば良いというものではありません。
過度な研磨は塗装の耐久性を落としてしまいます。
当店は塗装膜厚計を使用し、パネルごとの膜厚を厳密に管理しながら作業を進めました。
ポリッシャーの回転数、加圧、そして動かすスピードをコントロールし、塗装の「余分な角」だけを取り除いていきます。

この肌調整を行うことで、ディーラー仕上げで付着していたオーロラマークが消えるのはもちろんのこと、塗装表面がまるで水面のように静まり返り、照明の映り込みがクッキリとシャープに変化しました。
 アルピナブルーが本来持っている深みと、粒子が浮き出るような透明感。
これらを最大限に引き出すためには、ただ磨くのではなく、この「整える」工程が不可欠なのです。
コーティングの性能を最大限に引き出し、強固に定着させるための理想的な下地が整いました

GTECHNIQ CRYSTAL SERUM BLACKの施工

完璧に肌調整された塗装面を保護するため、GTECHNIQ(ジーテクニック)のCRYSTAL SERUM BLACK(クリスタルセラム ブラック)を施工します。
 このコーティング剤は、プロ専用モデルとして開発されたハイエンドセラミックコーティングです。

最大の特徴は、性質の異なる2層構造による保護性能です。
1層目のベースレイヤーは「柔軟性」を持っています。
車のボディは気温の変化やエンジンの熱でわずかに膨張・収縮を繰り返します。
完全に硬化するだけのガラスコーティングでは、この動きに追従できず微細なクラックが入るリスクがありますが、クリスタルセラムのベース層はこの動きに追従し、密着を持続させます。
 2層目のトップレイヤーは「超高硬度」の被膜を形成します。
鉛筆硬度9H相当の硬さで、洗車傷や走行中の飛び石、酸性雨、鳥のフンなどの外的要因から塗装を物理的に保護します。

施工において重要なのは、温度と湿度の管理、そして正確な塗布タイミングです。
 クリスタルセラムは硬化反応が非常に速いため、パネルごとに区切って塗布と拭き上げを行います。
特に「ブラック」グレードは高濃度であるため、拭き残しやムラが許されません。
 特殊照明で様々な角度から確認しながら、一切のムラがないように仕上げていきます。
肌調整によって平滑化された塗装面にコーティングが浸透・硬化することで、ボディは濡れたような厚みのある艶を帯び、圧倒的な光沢を実現しました。

足回りの洗浄とホイール脱着施工

ボディの施工が完了した後、BLACKコースに含まれる足回りの仕上げに入ります。
ホイールを車体から取り外しての施工を行いました。

なぜわざわざホイールを外すのか。
その理由は、装着状態では洗浄・コーティングが不可能な「インナーリム(ホイールの内側)を完璧に施工するためです。
 アルピナの特徴であるマルチスポークホイールは、スポーク数が多く複雑な形状をしており、ブレーキダストが非常に溜まりやすい構造です。
特に輸入車のブレーキパッドはダストが多く出るため、裏側をコーティングしておかないと、熱でダストが塗装面に焼き付き、除去が困難になります。

外したホイールは専用スタンドに載せ、中性の鉄粉除去剤を使用して洗浄します。
ゴールドの塗装は非常に繊細なため、酸性の強いケミカルは使用せず、化学反応と柔らかなブラシを使って時間をかけて汚れを浮かせ、除去しました。
裏側の隅々まで汚れを落とし、脱脂を行った上で、耐熱性の高い専用コーティング剤を塗布します。

ホイールを外している間に、同じくコースに含まれるブレーキキャリパーへのコーティングも行います。
 さらに、ホイールハウス(タイヤハウス)内のインナーフェンダーも見逃しません。
ここは通常、樹脂製のパーツが使われていますが、泥汚れや経年により白っぽくなっていることが多い箇所です。
 ここもBLACKコースの「樹脂コーティング」の一環として施工します。
洗浄後に専用剤を塗布して黒々と仕上げることで、タイヤとボディの隙間にある「影」の部分が濃くなり、視覚的に足元が引き締まり、車全体がシャープに見えるようになります。

コーティング施工後のお写真

インテリアのクリーニングとレザーコーティング

続いて、インテリアの施工を行います。
先述した通り、白のレザーシートにはすでに黒ずみなどの汚れが付着していました。

コーティングを行う前のクリーニングが何よりも重要です。
汚れの上からコーティング剤を塗布してしまうと、汚れを封じ込めてしまい、後から除去することが不可能になるからです。
 ドイツ製のレザー専用クリーナーを使用し、革のシボ(表面の凹凸)に入り込んだ汚れを浮かせます。
マイクロファイバークロスで優しく拭き取ると、目に見えていなかった汚れまで取れ、クロスが黒くなりました。
これを全席、ステアリング、ドアトリム、センターコンソールと繰り返し、レザー本来の純白の状態に戻します。

クリーニング完了後、乾燥を経てGeist Repel(ガイスト リペル)によるレザーコーティングを施工します。
このコーティング剤を選定した理由は、「革の通気性と質感を損なわない」点にあります。
 安価なコーティング剤の中には、表面を樹脂皮膜で覆ってしまい、ビニールのような質感に変えてしまうものがあります。
しかしGeist Repelは、革の繊維一本一本に浸透して定着するため、革本来のしっとりとした手触りや、温度調整機能(通気性)を維持します。

その上で、デニムの色移りや油汚れ、化粧品の付着などを強力に防ぐ防汚性能を発揮します。
 特に運転席のサイドサポートなど、乗降時に擦れやすい部分は念入りに重ね塗りを行いました。
 あわせて、インテリアにあるカーボンパネルにもセラミックコーティングを施工しました。
指紋が目立ちやすいピアノブラックやカーボンパーツですが、コーティングにより表面の滑りが良くなり、指紋が付着しにくく、また付いても一拭きで除去できる実用性を高めました。

施工完了・引き渡し

数日間にわたる全工程が終了し、最終チェックを行います。
 照明を落とし、自然光に近いライト環境で全体を見渡します。
 肌調整によって研ぎ澄まされたボディは、鏡面のように周囲を映し込み、アルピナブルーの深みが増しています。
足元はインナーリムまで黒々と輝くゴールドホイールが引き締め、ドアを開ければ汚れのない白革のインテリアが広がります。

オーナー様は、新宿をはじめとする広範囲でカーコーティング店を探された末、事前に群馬まで足を運び、当店を選んでくださいました。
 そして、愛車を完璧な状態で維持するために、全てが含まれた「BLACKコース」をご決断されました。
その労力と熱意に対する答えは、仕上がったこの車両そのものです。

引き渡しの際、オーナー様にご確認いただき、新車以上の輝きになった愛車を見て納得の表情を浮かべていただけました。
 「遠くても、ここに来てよかった」と思っていただけるよう、技術と設備を整えてお待ちしていた甲斐がありました。

特別な一台だからこそ、施工店選びに妥協したくない。
そうしたオーナー様の想いに応えることが、私たちの仕事です。
 今後のお手入れやメンテナンスにつきましても、引き続きサポートさせていただければと思います。

 この度は遠方よりご用命いただき、誠にありがとうございました。

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